Deep Digging #5 ─ Soul & Funk

ソウル&ファンク深掘り
— ハウスバンドという名の主役

クレジットに名前がなくても、鳴らしていたのは彼らだった。

これは「ソウル&ファンク入門 — 体が先に分かる音楽」の続きです。まだの方は先にそちらをどうぞ。ソウル・ファンクを深掘りすると見えてくるのは、看板のシンガーの後ろで、レーベルごとに専属の“ハウスバンド”が主役級の仕事をしていたという事実です。

もくじ

  1. 「入門」を終えた人へ
  2. ライブ盤に宿る、本当の顔
  3. ハウスバンドを辿る沼
  4. ファンクの遺伝子はどう広がったか
  5. 次の一歩 — 入門の5枚、それぞれの続き
  6. 中古レコードをハウスバンドから掘るコツ
  7. 深掘り用語辞典
1

「入門」を終えた人へ

入門編では「グルーヴが主役」という話をしました。深掘りでは、そのグルーヴを実際に鳴らしていた“縁の下の力持ち”たちに光を当てます。ソウル・ファンクのレーベルには、専属で数々の名盤を支えたハウスバンドが存在し、彼らの存在を知るだけで同じ棚がまったく違って見えてきます。

2

ライブ盤に宿る、本当の顔

ソウル・ファンクのアーティストの多くは、伝説的なライブ・パフォーマーでもありました。ジェームス・ブラウンの『Live at the Apollo』(1962年)は、スタジオ録音以上の熱量と客席の熱狂までもがそのまま記録された一枚として知られ、彼のキャリアを決定づけた名盤とされています。スタジオ盤で好きになったアーティストほど、ライブ盤にも手を伸ばしてみてください。まったく違う顔に出会えることがあります。

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ハウスバンドを辿る沼

Staxのハウスバンド、ブッカー・T&ザ・エムジーズは、オーティス・レディングをはじめとするStaxのほぼすべての録音を支えました。モータウンにも同様に「ファンク・ブラザーズ」と呼ばれる専属スタジオ・ミュージシャン集団がいて、数え切れないヒット曲を演奏しながら、当時のレコードにはほとんどクレジットされていませんでした(彼らの功績は、のちのドキュメンタリー映画でようやく広く知られるようになりました)。歌手の名前だけでなく、レーベルの裏にいたバンドの存在を知ることが、ソウルの深掘りの核心です。

4

ファンクの遺伝子はどう広がったか

ジェームス・ブラウンのバンドで腕を磨いたホーン奏者、フレッド・ウェズリーとメイシオ・パーカーは、のちにジョージ・クリントン率いるパーラメント/ファンカデリック(通称P-ファンク)の一員として、JB由来のリズム哲学をさらに宇宙的でサイケデリックな方向へと広げていきました。1つのバンドで培われたグルーヴの遺伝子が、まったく別の編成・別の美学のグループに受け継がれていく——これもロックのバンド系譜と同じ構造の沼です。

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次の一歩 — 入門の5枚、それぞれの続き

ソウル&ファンク入門で紹介した5枚を起点に、次に手を伸ばしてほしい一枚をそれぞれ用意しました。

1
オーティス・ブルーの次は → サム&デイヴ:Hold On, I'm Comin'同じハウスバンドの、別の顔

1966年、Stax。オーティスと同じブッカー T&ザ・エムジーズが支えた、また違うテンションのサザン・ソウル。ハウスバンドの懐の広さが分かります。

2
I Never Loved a Man...の次は → アレサ・フランクリン:Lady Soul絶頂期の、その先へ

1968年。アトランティック期の充実がさらに深まった一枚。デュエットやゴスペル色の強い楽曲も含め、歌の幅がさらに広がります。

3
セックス・マシーンの次は → パーラメント:Mothership Connectionファンクの遺伝子が宇宙へ

1975年。JBのバンド出身者も参加した、ジョージ・クリントン率いる集団によるSF的スケールのファンク大作。グルーヴの受け継がれ方が体感できます。

4
スタンド!の次は → There's a Riot Goin' On祝祭の、あえての反動へ

1971年。『スタンド!』の多幸感から一転、内省的で不穏な空気に満ちた問題作。同じバンドがここまで振れ幅を持てることに驚かされます。

5
What's Going Onの次は → Let's Get It On社会派から、官能へ

1973年。社会を歌ったマーヴィン・ゲイが、今度は愛と欲望を真正面から歌った一枚。同じ人の中にある2つの顔が味わえます。

6

中古レコードをハウスバンドから掘るコツ

レーベルのハウスバンドを軸に探す。歌手名だけでなく「Staxのあの音」「モータウンのあの演奏」という軸で棚を眺めると、知らない歌手の一枚にも自然と手が伸びるようになります。

12インチ・シングルにも目を向ける。1970年代後半以降、ディスコ文化の広がりとともに、ファンク/ソウルの曲がロング・ヴァージョンにリミックスされた12インチ・シングルが多く出回るようになりました。7インチとはまた違う、ダンスフロア仕様の長尺ヴァージョンに出会えることがあります。

ライブ盤は見つけたら即確保。2章で触れた通り、ソウル・ファンクにおいてライブ盤はスタジオ盤に劣らない、時にそれを超える価値を持ちます。中古店で見かけたら優先的にチェックしてみてください。

7

深掘り用語辞典

最後に、ソウル・ファンクの深掘りでよく見る言葉だけ。忘れたらここに戻ってください。

ハウスバンド
特定のレーベルに専属し、多くのアーティストの録音を支えた演奏集団。Staxのブッカー T&ザ・エムジーズが代表例です。
ファンク・ブラザーズ
モータウンの数々のヒットを支えた専属スタジオ・ミュージシャン集団の通称。当時のレコードにはほとんどクレジットされていませんでした。
12インチ・シングル(エクステンデッド・ミックス)
ディスコ文化とともに広まった、ダンスフロア向けに尺を伸ばしたリミックス盤。同じ曲の別の顔が楽しめます。
P-ファンク
ジョージ・クリントンを中心にしたパーラメント/ファンカデリックのゆるやかな集合体の通称。ファンクの遺伝子が最も奇想天外に広がった一派です。
ライブ・アルバム
実演をそのまま収めた作品。ソウル・ファンクにおいてはスタジオ盤と並ぶ、時にそれ以上の代表作になり得るフォーマットです。
Into the Swamp ─ もっと深く ソウル&ファンク沼 — レア・グルーヴという運動
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