Into the Swamp #3 ─ City Pop

シティ・ポップ沼
— 機材とスタジオの奥底へ

あの音の正体は、1台のシンセサイザーだった。

これは「シティ・ポップ深掘り — 歌手より先に、書いた人を見る」のさらに先です。深掘りでは作詞家とアレンジャーの話をしましたが、この沼ではその音自体を生み出した“機材”と“場所”にまで踏み込みます。

もくじ

  1. 「深掘り」のさらに先へ
  2. シンセサイザーという機材の沼
  3. スタジオという場所の沼
  4. 初回盤と後年盤を見分ける沼
  5. 未発表音源が発掘される日
  6. 再評価という現象そのものを疑う
  7. 沼用語辞典
1

「深掘り」のさらに先へ

深掘り編では、誰が詞を書き、誰が編曲したかという“人”の話をしました。この沼ではその先、あの独特のサウンドを実際に生み出していた機材と、それが録音された場所にまで目を向けます。

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シンセサイザーという機材の沼

シティ・ポップのきらびやかな音色の背後には、当時のシンセサイザーの存在があります。分厚く艶やかな音色で知られるヤマハのCS-80、キレのいいベース音で人気を博したシーケンシャル・サーキッツ社のプロフェット5、多彩な音作りが可能なローランドのジュピター8——こうした名機の音を覚えると、アーティストが違ってもシンセサイザーの機種で“時代の音”を聴き分けられるようになります。歌詞やメロディだけでなく、鳴っている音色そのものが時代を語る証言者です。

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スタジオという場所の沼

クラシックに録音会場の沼があるように、シティ・ポップにも“あの音”を生んだレコーディングスタジオがあります。作曲家・村井邦彦が設立したアルファレコードは自社スタジオを構え、独自のサウンドを育てました。歌手名やレーベル名だけでなく、クレジットに小さく記された録音スタジオの名前を追いかけると、また違う棚の歩き方が見えてきます。

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初回盤と後年盤を見分ける沼

ヒットした作品ほど、発売当初のプレスとその後の増刷・再発とで、帯のデザインや規格番号の枝番、盤に刻まれたマトリクス情報が変わっていることがあります。クラシックやジャズの沼と同じく、ジャケットだけでなく盤そのものの細部を見比べる癖をつけると、初回盤ならではの手がかりに気づけるようになります。

5

未発表音源が発掘される日

デモテープや没になったテイクなど、当時は日の目を見なかった音源が、アーティスト本人や関係者の手元から数十年後に発見され、リマスター盤のボーナストラックとして初めて公開されることがあります。海外での再評価の機運の高まりとともに、こうした発掘・再発の動きは今も続いています。知っているはずのアーティストの、知らなかった一面に出会えるかもしれません。

6

再評価という現象そのものを疑う

2010年代後半以降の海外での再評価は、シティ・ポップというジャンルの見え方を大きく変えました。ただしこの沼まで来ると、一歩引いて「なぜこの曲が、この時代に、この文脈で再評価されたのか」という現象そのものに関心が向くようになります。当時の日本でどう受け止められていたかと、いま海外でどう聴かれているかは、同じ曲でもまったく別の物語です。両方の物語を知ることが、このジャンルを本当に深く聴くということかもしれません。

7

沼用語辞典

最後に、この沼でよく見かける言葉だけ。忘れたらここに戻ってください。

ヴィンテージ・シンセサイザー
CS-80やプロフェット5など、当時の名機とされるシンセサイザー。その音色を覚えると、時代やアレンジャーの傾向が推測できます。
自社スタジオ
レコード会社や制作会社が自ら保有するレコーディングスタジオ。独自のサウンドが育つ土壌になりました。
初回盤/後年盤
最初のプレスと、その後の増刷・再発盤。帯や規格番号、マトリクスの違いから見分けることがあります。
発掘音源
当時未発表だったデモやアウトテイクが、後年になって発見・公開される音源。
再評価
発表から時間を経て、当初とは異なる文脈(多くの場合海外)で新たに評価されるようになる現象そのもの。
The Laboratory ─ さらに先へ シティ・ポップ研究室 — コード進行と再文脈化の先へ
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